☆この記事のチェックポイント☆
国内初承認となる近視進行抑制点眼薬「リジュセアミニ0.025%」が発売されます。
- 世界的に近視進行抑制効果が認められているアトロピン0.025%を含有
- 点眼1回分の包装により、防腐剤フリー処方
日本の近視進行抑制治療にも新時代が!
厚生労働省は、2024年末に国内初の近視進行抑制点眼薬「リジュセアミニ0.025%(参天製薬)」を正式承認しました。
近視進行抑制点眼薬といえば、当サイトでも紹介している「マイオピン」がありますが、シンガポールをはじめとする海外で承認された目薬であり、導入するためには海外から輸入する必要がありました。
敷居が高いと導入を見送っていた施設もあると思いますが、今後は、ドライアイ点眼薬などで馴染み深い参天製薬が製造する「リジュセアミニ0.025%」の登場により、近視進行抑制治療がより身近なものになることが期待されます!
マイオピンとの違いは!?
まず、「マイオピン」をご存じない方や、近視進行抑制点眼薬の作用機序について詳しく知りたい方は、過去のコラムで解説していますので、こちらをご覧ください。
低濃度アトロピンがキーワードになりますが、既存の「マイオピン」も今回国内初承認された「リジュセアミニ」も同様に低濃度アトロピンを使用しています。
そもそも、昔からアトロピン点眼薬(1%)という目薬が存在しています。
アトロピン点眼薬(1%)は、調節麻痺薬(ピント調節筋を麻痺させ、屈折検査に用いる)や、虹彩炎(茶目の炎症)の治療薬として広く用いられています。
このアトロピン点眼薬ですが、世界各国の研究により、子供の近視進行抑制効果を期待できることが分かってきました。
詳しいメカニズムは完全には解明されてはいませんが、過度の調節緩和、散瞳による強膜クロスリンキングの加速、脈絡膜血流増加に伴う脈絡膜肥厚などの仮説が提唱されています。
「それなら、既存のアトロピン点眼薬(1%)をそのまま使ったら良いのでは?」と思うかもしれませんが、調節麻痺による近方視力低下(老眼状態)や散瞳による羞明(光が眩しい)といった副作用がきつい問題がありました。
おまけに、シンガポールの研究において、アトロピン点眼薬(1%)点眼中の近視進行抑制効果は目を見張るものがあったものの、点眼中止後1年間で、近視が急速に進行するというリバウンド効果が認められました。
そこで、アトロピン点眼薬の濃度を0.5%、0.1%、0.01%に薄めて同様の研究を行ったところ、濃度依存性に近視進行抑制効果が得られる結果となったものの、0.01%アトロピン点眼薬においても近視進行抑制効果が認められました。(1)
加えて、1%アトロピン点眼薬で生じていた点眼中止後1年間の近視の急速なリバウンドは、0.01%では認められませんでした。
これらにより、近視進行抑制点眼薬として「マイオピン0.01%」が発売され、その後、アトロピン濃度をやや濃くして近視進行抑制効果を高めた「マイオピン0.025%」も追加されました。
今回、国内初認証された「リジュセアミニ0.025%」は、低濃度アトロピンを0.025%含有しています。
「マイオピン0.025%」と同等のアトロピン含有量となっており、それぞれ同等の近視進行抑制効果を期待できます。
「リジュセアミニ0.025%」は、日本の参天製薬とシンガポール国立眼科・視覚研究所であるシンガポールアイリサーチインスティテュートにより共同開発されました。
「リジュセアミニ」と「マイオピン」の大きな違いは、「リジュセアミニ」は参天製薬の高い製造技術により、点眼1回分の小型容器にパッケージングされているところです。
これにより、目薬に防腐剤を入れる必要がなくなりました。
まとめ
国内初承認となる近視進行抑制点眼薬「リジュセアミニ0.025%」が発売されます。
- 世界的に近視進行抑制効果が認められているアトロピン0.025%を含有
- 点眼1回分の包装により、防腐剤フリー処方
日本でも小児の近視進行抑制治療がスタンダードになることを筆者は願っています。
- Chia A, Chua WH et al. : Atropine for the treatment of childhood myopia: safety and efficacy of 0.5%, 0.1%, and 0.01% doses (Atropine for the Treatment of Myopia 2). Ophthalmology 119 : 347-354, 2012.