遠視治療

このページでは、遠視治療についてお話していきます。

世界的に近視人口が増える昨今、遠視人口は反比例で減少しています。

まずは、遠視がどのような眼の状態か、おさらいしていきましょう。

 

遠視

遠視の眼は、屈折異常により網膜上より後方の位置でピントが合っている状態です。

よく遠視の眼は遠くが見えて、近くが見にくいと思われている方が多いですが、厳密には間違いです。

遠くのものを見るときも水晶体のピント調節を行ってピント合わせを行ってものを見ています。

近くのものを見る時は、更に強く調節する必要があります。

つまり、どの距離を見る時も常にピント調節をする必要がある為、眼精疲労を訴える場合があります。

遠視の眼は、常にピント調節を行っている状態のため、老眼の自覚は早くなります。

 

決して遠くが良く見える眼ではない!

「遠視=遠くがよく見える」と理解されている方がいらっしゃるようです。

 

遠視の程度が軽度な場合、自身の眼の中の筋肉を用いてピント調節できるため、確かに遠くが良く見える眼になります。

遠視の度数が強くなっていくと、自身のピント調節力では代用できなくなり、遠くのものも鮮明に見えない状態になります。

 

ピント調節力は年齢とともに衰えていきます。

軽度~中等度の遠視があっても、若い頃は自身のピント調節力で代用できていたのが、年齢を重ねるに従い、遠くも近くもだんだん見えにくくなってきます。

 

遠視の程度が中等度以上の場合、子供の頃から眼鏡での矯正が必要となり、遠視の程度が弱くても、年齢を重ねるに従い眼鏡やコンタクトレンズ矯正が必要になってくる場合があります。

 

遠視と斜視の関係性

斜視という眼の病気をご存知でしょうか?

 

私たちの眼は左右2つあり、両方の眼を使って1つのものを見ています。

斜視とは、片方の眼は目標を見ていても、もう片方の眼が目標と違う方向を見ている眼の状態を言います。

 

斜視にも種類があり、片方の眼が内側に寄る内斜視、外側に寄る外斜視、上下ズレのある上下斜視などです。

 

小児の遠視の場合、特に気を付ける必要があるのが、内斜視の一種である調節性内斜視です。

 

調節性内斜視に注意!

調節性内斜視とは、遠視があり、見ようとするものにピントを合わせようと過度な調節努力をすることにより、眼が内に寄ってしまう内斜視です。

 

ピントを合わせようとする「調節」と、眼を寄せようとする「輻輳」は密接な関係にあり、通常はバランス良く保たれています。

遠視があり、自力でピント合わせしようと頑張って調節することで、過剰な輻輳が誘発され、調節性内斜視が出現するケースがあるのです。

中等度以上の遠視にみられるケースが多いです。

 

もちろん、遠視が強い子供の全例に内斜視が出現することはないですが、遠視は内斜視の危険因子となるので、お子様の様子を良く見てあげてください。

調節性内斜視の発症当初は、より大きなピント調節力を要する近業作業時に内斜視が見られることが多いです。

絵本を読んだり、積み木をしたりする時の眼の様子を観察してみてください。

 

調節性内斜視の治療法は?

調節性内斜視の治療法は、原因となっている遠視を眼鏡で矯正することです。

眼の調節を担う筋肉を一時的に麻痺させる目薬を使用し、隠れている遠視も含めて最大限の遠視を検出し、矯正します。

 

遠視を眼鏡で矯正することで、過度なピント調節を行う必要がなくなり、調節に伴う輻輳は軽減され、眼位が正常となります。

 

弱視の発症に注意!

調節性内斜視は、遠視があり、ものを明視しようと頑張ってピント調節することで、過度な輻輳が生じてしまい、発症する内斜視でした。

 

遠視の程度が強く、ものを明視しようと努力しない場合、斜視にならなくても弱視になるケースがあります。

要はピンボケ状態のまま過ごしてしまうケースで、遠視の度が増すにつれ、リスクが高くなっていきます。

 

弱視とは、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力が出ない眼の状態であり、その状態を放置すると永久的に視力が出にくくなります。

 

人の視覚の感受性は、生後1ヶ月から生後18ヶ月が非常に高く、その後、徐々に衰退していきますが、8歳頃まではかなりの感受性を有していると言われています。

この時期に、適切な治療をすることが、子供の将来に関わってくるのでとても重要になります。

 

遠視をはじめとする屈折異常弱視の治療法は?

調節性内斜視と同様、原因となっている遠視を眼鏡で矯正します。

眼の調節を担う筋肉を一時的に麻痺させる目薬を使用し、隠れている遠視も含めて最大限の遠視を検出し、矯正します。

 

眼鏡をかけることで改善するケースが多いですが、例えば屈折異常の左右差がある場合、視力の良い方の眼を優先的に使ってしまい、視力の弱い方の眼をうまく使えていない場合があります。

 

そのような時は、アイパッチ(片眼を隠すシール付き遮閉具)を用いて健眼遮閉を行うことがあります。

視力の良い方の眼を遮閉することで、視力の弱い方の眼を強制的に使わせる治療法です。

ずっと片眼を隠すのではなく、1日のうち時間を決めて行うことが多いです。

 

眼鏡は常時装用する必要があります。

 

遠視治療その1 眼鏡

近視の眼鏡は、光を拡げる凹レンズで矯正を行いました。

遠視の眼鏡は、光を集める凸レンズにて矯正します。

遠視の眼は、網膜より後方で焦点を結ぶため、網膜上に焦点を持ってくるには光を集める必要があるからです。

 

凸レンズには拡大効果もありますので、遠視の眼鏡をかけると眼が大きく見えるのが特徴です。

 

先に述べた調節性内斜視や屈折異常弱視では、必須の治療法になります。

 

遠視の程度が弱い場合、若い頃は眼鏡なしで生活を送っていても、老眼が出てくるとピント調節力が衰えてくるため、眼鏡が必要になってきます。

特に、より大きなピント調節力を必要とする手元作業では顕著で、いわゆる老眼鏡が必要です。

 

遠視の方は、遠くを見る時もピント調節が必要な訳ですから、若い頃のようにシャープには見えにくくなってきます。

 

1本の眼鏡で遠くと近くを見ることができる遠近両用眼鏡は、早期よりかけておくことで慣れやすいと言われており、特に遠視の方は、老眼を自覚し始めた早期より試してみることをオススメします。

 

遠視では、ピント調節を頑張ることで、眼精疲労を生じやすくなります。

老眼まではいかなくても、「PC作業が多く疲れる」、「夕方になると眼が疲れてくる」といった症状が生じやすいです。

 

PC作業が多いなら、パソコンの距離に合わせた眼鏡を作成すると眼精疲労が軽減するかもしれません。

 

お近くの眼科や眼鏡屋に相談してみてください。

 

遠視治療その2 コンタクトレンズ

近視治療のページでも出てきたコンタクトレンズですが、もちろん、遠視治療にも用いられます。

眼鏡と同じで、近視矯正には光を拡げる凹レンズ、遠視治療には光を集める凸レンズの仕組みを用います。

 

眼鏡のところでお話したように、遠視の方は老眼の自覚が早い傾向にあります。

コンタクトレンズにも、遠近両用タイプがあるので、手元が見にくくなってきたら遠近両用コンタクトレンズを装用する選択肢もあります。

眼鏡が煩わしいという方には、コンタクトレンズが向いているでしょう。

 

眼鏡と違い、眼に直接入れるコンタクトレンズですから、メンテナンスは欠かせません。

コンタクトレンズを外した後、付ける前のメンテナンスは必ず行いましょう。

 

メンテナンスがどうしても面倒という方は、1dayソフトコンタクトレンズをチョイスしてください。

使い捨てタイプですので、レンズを外すとあとは捨てるだけなので、メンテナンスフリーです。

 

遠視治療をまとめると

遠視の程度が弱く、視力が十分出ている場合、裸眼で過ごしている方がほとんどです。

必ず眼鏡を装用する必要はありません。

 

注意すべきは、遠視が起因する斜視や弱視が生じているケースで、眼鏡装用は治療として必須になります。

子供は、なかなか自分で見にくいことを訴えてくれないので、保護者が注意深く観察する必要があります。

 

子育て中の方、これから子育て予定の方は、弱視のところでお話した「視覚の感受性期」を頭の片隅に入れて、お子様の将来のために、定期的な眼科受診をオススメします。