近視の進行は抑制できるの?
現在、日本を始め世界各国で近視人口が増加しています。
ある研究では、2050年には世界人口の約半数、50億人が近視になると予測されています。
世界人口の2人に1人が近視の時代って、少し驚きです。
そもそも、近視になると何がいけないのでしょうか?
近視の眼は、文字通り「近くが見える眼」です。
裸眼の状態では、近くの距離にピントが合っており、遠くを鮮明に見るためには眼鏡やコンタクトレンズなどを用いた視力矯正が必要になります。
「眼鏡をかけるのが全然苦にならないし、近視は近くが見えて便利だわ。」
事実、そんな声も聞かれます。
確かに、近視の眼はもともと手元にピントが合っていることから、老眼を自覚しにくく、40代を過ぎてからは有利になる面もあるのですが、近視が過度に進むことで眼疾患に罹患するリスクは高くなります。
近視などの屈折異常と、眼の長さ(眼軸長)は密接に関わっています。
近視の度が進めば進むほど、眼の長さは長くなっていきます。
眼の奥には、ものを見るために重要な網膜(フィルムに相当)があるのですが、この網膜の厚みには限度があることから、近視の度が進めば進むほど、網膜の厚みが薄くなっていきます。
薄くなった網膜は、網膜剥離(網膜が剥がれてしまう疾患)を生じるリスクを高めます。
また、神経線維(網膜で得た情報を脳に送る電線のようなもの)に影響を及ぼすことで、緑内障(視野が欠けていく疾患)の発症リスクを高めます。
他にも若い年代から飛蚊症(視界に蚊のようなものが飛ぶ現象)を自覚する方が多くなります。
このように、近視は単に遠くが見にくいだけでなく、眼疾患のリスクを高めることから、できる限り、近視の進行を抑制する必要があるのです。
では、どのような方法で近視の進行を抑制できるのでしょうか。
眼の成長期にあたる、子供の時期の対策がカギを握ります。
具体的に見ていきましょう。
オルソケラトロジー
当ホームページでご紹介しているオルソケラトロジー治療です。
夜間に治療用コンタクトレンズを装用した状態で就寝し、翌朝、起床時にコンタクトレンズを外します。
寝ている間に、角膜の形状を矯正することで、日中は裸眼で生活できるようになります。
このオルソケラトロジー治療ですが、眼の成長期にあたるお子様が治療することで、近視進行抑制効果があることがさまざまな研究で証明されています。
その機序は完全には解明されていないのですが、コマ様収差をはじめとする収差(ある1点から出た光の束が、完全には1点に結像しないこと)が関わっているのではないかと言われています。
「裸眼で生活できる」だけでも大きなメリットなのに、「近視進行抑制効果」もあるオルソケラトロジー治療は、まさに一石二鳥の視力矯正治療法と言えるでしょう。
※近視進行抑制は、近視の進行を完全に止めるものではなく、あくまで近視の進行スピードを抑えるものです。
また、効果の出現には個人差があります。
低濃度アトロピン点眼
主に眼科における小児の視力・屈折検査に用いられるアトロピン点眼薬。
アトロピンを点眼することにより、ピント調節筋を麻痺させより正確な屈折値を測定することができます。
このアトロピン点眼薬ですが、小児の近視進行抑制にも効果があることが世界の研究で分かってきました。
しかし、通常の濃度のアトロピン点眼薬では副作用が出ることから、毎日点眼することは現実的ではありませんでした。
そこで、アトロピン点眼薬の濃度を薄めた低濃度のもので治験をしたところ、近視進行抑制効果を維持しつつ副作用がほとんどないことが認められました。
毎晩1回の点眼で、近視進行抑制効果を得られるなんて、容易に継続できる治療法ですよね。
お子様の近視が進行している場合は、検討されてみてはいかがでしょうか。
※近視進行抑制は、近視の進行を完全に止めるものではなく、あくまで近視の進行スピードを抑えるものです。
また、効果の出現には個人差があります。
オルソケラトロジー+低濃度アトロピン点眼 併用療法
上記でご紹介した近視進行抑制効果のある「オルソケラトロジー」と「低濃度アトロピン点眼」を併用することで、更なる相加効果が期待されます。
オルソケラトロジーによる角膜矯正と、低濃度アトロピン点眼による薬理作用は、異なるファクターからのアプローチになるので、相加効果を期待できるのです。
このホームページをご覧になっている方は、オルソケラトロジー治療に興味がある方や、実際に治療を始めようとされている方だと思います。
毎晩のオルソケラトロジーレンズ装用前に、低濃度アトロピン点眼薬を1回点眼するだけで併用治療ができますので、オススメです。
バイオレットライト
太陽光に含まれるバイオレットライト。
光は波長で表されるのですが、紫外線に近い360nm-400nmの短波長領域がバイオレットライトです。
以前より、バイオレットライトによる近視進行抑制の研究報告がありましたが、最近になり、細胞レベルでの作用機序が解明されました。
眼の奥にある網膜(フィルムに相当)には、網膜神経節細胞があるのですが、その中の非視覚型光受容体OPN5が、バイオレットライトを受容することで、近視進行を抑制するようです。
これにより、バイオレットライトによる近視進行抑制効果は、よりエビデンスが高いものとなりました。
では、どのような方法でバイオレットライトを浴びたら良いのでしょうか。
答えは簡単、太陽光のもと外遊びをすることです。
研究チームは、1日2時間以上の外遊びを推奨していますが、現代の生活環境では難しく感じる方も多いと思います。
昨今のコロナの影響もあり、ステイホームに追い打ちをかけています。
毎日2時間以上が難しくても、今までより外遊びの時間を作るよう意識することは可能だと思います。
例えば、ベランダやお庭へ出るだけでも太陽光を浴びることは可能です。
室内では、窓を開放することで太陽光が届きやすくなります。
ちなみに、窓を閉めたままだと、UVカット効果によりバイオレットライトも遮断されてしまいます。
休日に子供を連れてレジャーへ行く、スポーツをするのも良いでしょう。
太陽光は、長時間浴びすぎると日焼けやシミ、そばかすの原因にもなるので、過度になり過ぎず、対策をした上で上手にお付き合いしていく必要がありますね。
「20-20-20」のルール
アメリカ眼科学会の研究によると、近視の進行抑制について「20-20-20」のルールを提唱しています。
30センチ以内のものを見続けると近視が進行しやすくなることから、①20分近業作業を行ったら、②20フィートの距離(6メートル)を、③20秒間見ること、を推奨しています。
「20-20-20」は語呂合わせなところもあると思いますが、要するに、「近くを見過ぎないこと」が重要です。
ピント調節に用いる眼の中の筋肉を少しでもリラックスさせることが大切です。
お子様が夢中になって何時間もゲームを続けていないでしょうか?
適度な休憩、遠くを見る時間を作って、眼を休ませる時間を作ってあげましょう。