今回のテーマは、「近視進行抑制治療の最前線-レッドライト治療とは-」です。
近視進行抑制治療は、オルソケラトロジーをはじめ、遠近両用コンタクトレンズ、低濃度アトロピン点眼療法などがあり、過去のコラムでも紹介してきました。
今回は、最新の近視進行抑制治療として、レッドライト治療をご紹介します。
レッドライト治療とは
遡ること2014年、近視研究が盛んな中国にて、650nmの赤色光であるレッドライトが、眼軸(目の長さ)の過剰な伸長を抑える効果があることが発見されます。
眼軸の過剰な伸長は、近視進行を助長するものであり、それらを止めることができれば、すなわち近視進行抑制を意味します。
2021年には、アメリカの眼科学会誌にてレッドライト治療は近視進行抑制効果が非常に高いと紹介され、世界的な注目を浴びています。
どんな治療法なの?
レッドライト治療は、非常に簡単かつ時間のかからない治療法です。
650nmの低出力赤色光を1日2回、1回3分間覗き込む
たったこれだけです。
研究において、治療を75%以上守り、きちんと実施したコンプライアンス良好群では、近視進行予防効果は約90%という驚きの報告がされています。(1)
ただし、まだ新しい治療法ですので、長期的な効果については今後の研究が待たれます。
治療には、アイライジングという機器を自宅で使用して行います。
副作用はあるの?
副作用はほぼありません。
一時的な眩しさ、閃光盲、残像などが生じることがありますが、治療後に目を閉じることで数分後には消失します。
治療の対象は?
適応年齢などの詳細は施設により差はありますが、近視進行抑制を狙った治療法ですので、基本的には小児が対象になります。
3歳から16歳前後を対象とした施設が多いでしょう。
近視眼に対する治療のため、遠視のお子様は治療対象外になります。
治療ができない方は?
レッドライト治療は、低出力の赤色光を短時間見るという非常に低侵襲な治療ですが、疾患等によち、治療対象外となる場合があります。
- 斜視(目のズレ)があり、両眼視機能異常がある方
- 左右眼どちらかに屈折(近視や遠視)以外の眼球異常(未熟児網膜症、網膜剝離、網膜芽細胞腫などの網膜疾患)、視機能に影響する全身疾患がある方
- 遺伝性網脈絡膜疾患(黄斑ジストロフィー、網膜色素変性症など)の家族歴がある方
- 瞳孔散大(瞳が大きい)のある小児、またはアトロピン、シクロペントラート、トロピカミドなど、瞳孔散大を引き起こす可能性のある薬剤を投与した後は適応外
当サイトでも紹介している低濃度アトロピン点眼治療との併用はできません。
ただし、低濃度アトロピン点眼治療を行っている方で、14日間以上の休薬時間を設けることでレッドライト治療を行うことができます。
尚、オルソケラトロジーとレッドライト治療の併用は可能です。
治療の安全性は?
アイライジングという機器は、JIS(日本工業規格)C 60825-1:2014のクラス1に準じるダイオードレーザーを採用されています。
最大2.5mWの出力と照度1600Luxを特徴とし、3分間の使用で瞳孔径4mmを通じて網膜に0.29mWの出力を与えるとされています。
健常な網膜であれば障害を起こさない領域のエネルギーのため、眼球へ直接照射しても安全です。
ヨーロッパ、オーストラリアなど30カ国以上で医療機器としての品質、安全性、有効性が認められており、他地域でも認可を得ています。
まとめ
新しい近視進行抑制治療であるレッドライト治療は、非常に簡単かつ短時間で自宅にて実施できる近視進行抑制治療法です。
その他の近視進行抑制治療を断念した方でも比較的始めやすいのではないでしょうか。
参考文献
(1)Yu Jiang,MD et al.Effect of Repeated Low-Level Red-Light Therapy for Myopia Control in Children:A Multicenter Randomized Controlled Trail.Ophthalmology,2022