老眼

眼科関係者のみならず、誰もが知っている「老眼」という言葉。

「最近、手元の文字が読みにくくなったなぁ」、「夕方になると見にくくなるなぁ」。

これらは老眼特有の症状です。

 

ちなみに「老眼」という言葉の認知度が高いですが、眼科専門用語では「老視」と言います。

ここでは、一般的認知度の高い「老眼」という言葉で統一するようにします。

 

老眼の症状は?

  • 近くの文字が見にくくなった
  • 遠くから近くを見る時、あるいはその逆でピント合わせに時間がかかる
  • 薄暗い環境で見にくくなった
  • 眼精疲労
  • 頭痛

 

老眼の原因は?

一言でいうと、老眼は眼のピント調整機能が老化により弱くなっている状態です。

これをより深く理解するためには、眼のピント調節機能について理解する必要があります。

 

私たちの眼の中には、水晶体というレンズの役割を担う器官があります。

水晶体の周りには、ピント調節を担う筋肉がついており、その筋肉が収縮、弛緩することで、水晶体のレンズを膨らませたり、縮ませたりしています。

 

若い頃は、この働きのおかげでピント調節がうまくできています。

ところが、年齢を重ねるに従い、ピント調節を担う筋肉が収縮しても、水晶体の弾性の低下により変形しなくなっていき、ピント調節がうまくできない状態になっていきます。

 

これが老眼の原因です。

 

 

年齢別調節力の変化

では、実際にどれ程のピント調節力の変化があるのでしょうか。

分かりやすくグラフにまとめていきましょう。

 

年齢(歳) 調節力(D)
10 12
20 9
30 6
40 4
50 2
60 1

 

調節力の単位はディオプターと言います。

数値が上がるほど、調節力は強いことを示しています。

 

10歳頃は12Dあった調節力が、60歳頃には1Dになっています。

これだけ見ても、ピント調節力の低下が分かると思います。

 

もう少し詳しく解析していくと、1Dの調節力は、遠方から1mの距離にピントを合わせる力を持っていることを意味します。

近視などの屈折異常がある場合、眼鏡で遠くに焦点を合わせた状態からの計算だと思ってください。

 

これを元に計算していくと、10歳頃は12Dつまり8cm前後までピント調節できることを意味します。

40歳頃は25cm前後、50歳頃は50cm前後、60歳頃は1m前後になります。

 

ちなみに、白内障手術をして眼内レンズが入っている方は、ピント調節機能は理論上ゼロになります。

 

老眼の治療法は?

老眼は老化現象の一種であり、病気ではありません。

近くのものが見にくくなれば、老眼鏡を装用すれば良く見えるようになります。

対症療法をすれば良い訳です。

 

近視の方ですと、普段かけている遠く用の眼鏡を外せば、裸眼で手元がしっかり見えるという方もいらっしゃいます。

それぞれの眼に合わせた老眼対策が必要になってきます。

 

老眼鏡

老眼鏡を専門的な言葉で表すと近用眼鏡と言います。

その名の通り、近くを見る時に用いる眼鏡です。

オーソドックスな老眼対策ですね。

 

自身のピント調節力が低下した分をレンズで補うことで近くを見えるようにします。

レンズ度数は0.25D単位で調整可能ですので、年齢や見たい距離に合わせて微調整が可能です。

 

遠近両用眼鏡

老眼鏡の一種とも言えますが、あえてグループ分けしてみました。

近用眼鏡が近くを見えるように度数調整された眼鏡だったのに対し、遠近両用眼鏡は遠くも近くも見えるように度数調整された眼鏡になります。

 

仕組みは、レンズの上部が遠用度数になっており、レンズの下部が近用度数になっています。

1種類の眼鏡で遠くも近くも見たい場合にオススメです。

 

一見、遠くも近くも見える万能な眼鏡なので、これさえあれば他の眼鏡はいらないと感じるかもしれません。

しかしデメリットもあり、1枚のレンズを遠く用、近く用で分けているため、度数の移行部で歪みを感じたり、慣れるのに時間がかかったりするケースがあります。

 

若いうちから装用することで慣れやすい傾向にありますので、老眼を自覚したら早めにトライしてみるのも良いでしょう。

見え方に慣れれば、万能な眼鏡であることに間違いありません!

 

遠近両用コンタクトレンズ

コンタクトレンズも日々進化してきており、今や遠近両用コンタクトレンズもバリエーション豊富になってきました。

 

眼鏡をかけることに抵抗のある方、裸眼に近い状態で過ごしたい方には、コンタクトレンズがオススメです。

眼鏡と違い、眼に直接触れるコンタクトレンズですので、レンズケアを怠らないように!

 

多焦点眼内レンズを用いた白内障手術

眼の中のレンズにあたる水晶体が濁ってくる病気が白内障です。

白内障の原因は様々ですが、多くは加齢に伴う蛋白の変性などが原因です。

 

白内障手術の技術進歩は目を見張るものがあり、傷口も数ミリと小さく、手術時間も片眼10分程度で済むようになってきました。

手術の際に、濁った水晶体の代わりに眼内へ挿入するのが、人工の眼内レンズです。

 

この眼内レンズの技術進歩が凄まじく、遠くも近くも見えるようにする多焦点眼内レンズが次々と発表されています。

 

当初は、ピントを合わせることができるのが遠くと近くの2焦点でしたが、最近では3焦点や5焦点の多焦点眼内レンズも存在します。

 

これらの多焦点眼内レンズを用いた場合、手術後は遠くも近くも見えるようになることから、白内障手術と同時に老眼治療もできるようになっています。

いくらレンズが高性能になっているとはいえ、若い頃の見え方と比較すると劣ってしまいますので、過度な期待はなさらぬように!

 

サプリメント

最近では、老眼対策を謳うサプリメントも販売されています。

アスタキサンチンやルテインなどの成分は、眼の疲れや眼の機能改善があると言われています。

 

臨床試験では、手元のピント調節力が改善されるというデータが出ているようです。

弾性が低下し、硬くなった水晶体を元に戻すのは難しいですが、調節を担う筋肉の疲れの改善には期待できる面がありそうですね。

 

老眼をまとめると

老眼は老化現象の一種であり、年齢を重ねると誰にでも現れる症状です。

老眼という響きから、「自分はまだ若いから」、「老眼鏡をかけるのは恥ずかしい」と思われている方もいらっしゃるようです。

 

ただ、手元が見にくい状態で作業を続けていると、余計に疲れを蓄積させるだけです。

早めの対策をオススメします。

 

老眼鏡は、眼科用語では近用眼鏡と言います。

老眼鏡という名称に抵抗のある方は、近用眼鏡と覚えてください。

こちらで紹介したような症状がある方は、近用眼鏡を作りにお近くの眼科、眼鏡屋へ行かれてみてはいかがでしょうか。