今回のテーマは、「子供のゲームやスマホのしすぎは目に良くないの?」です。
このテーマ、結構悩んでいる親御さんは多いのではないでしょうか。
デジタルデバイスの進化は、便利な時代になった反面、それらを子供が使用する機会も増え、種々の悪影響が出ないか心配する声をよく聞きます。
当コラムでは、目の成長時期である子供がゲームやスマホをしすぎた場合、どのような悪影響が出る可能性があるのかをお伝えしていきます。
子供の目は成長段階である
お盆や正月に、久しぶりに親戚の子供と会うと、以前より大きくなっていることに驚いた経験はないでしょうか。
成長盛りの子供は、半年会わなかっただけで見違えるほど大きくなっていることがあります。
実は、身長が伸びるように、目も成長しています。
身長の変化は目に見て分かりますが、目の成長については、見た目には分からないですよね。
では、子供の目はどのように成長しているのでしょうか。
まずは、眼球の成長から見ていきましょう。
眼球の大きさ(長さ)は、眼軸長として表されます。
成人の眼軸長は約24mmが正常とされ、10円玉くらいの大きさです。
成長に伴う眼軸長の変化は、出生時は約17mmで、その後1年間の急激な伸長により21mm前後に達します。
その後は緩徐に成長を続け、成人では約24mmになります。(1)
視力の観点からみると、出生直後は光覚(光を感じる程度)、まもなく手動(手の動きが分かる)から指数(指の本数を数えられる)となり、生後3ヶ月で0.05、6ヶ月で0.1、1歳で0.2-0.3、2歳で0.6、3歳で1.0に達すると言われています。(※個人差あり)
調節(ピント調節)およびおおまかな両眼視(両眼を使って1つのものを見ること)は、1歳を過ぎると可能となりますが、完全な両眼視機能の獲得まで含めると、視覚の発達がほぼ完成するのは6歳頃になります。(2)
目の成長段階で過度のゲーム、スマホを使うと…
眼軸長が過度に伸びると、近視の度数が増していくという話は過去のコラムでご紹介しています。
この研究によると、「5歳以降に近視が急速に進行し、6歳からの5年間で-2.0Dを超える近視化が認められ、8歳からの5年間で近視が最も進行していた」とされています。
では、子供の近視が進行する危険因子は何でしょうか。
それは、「近業作業の増加」、「屋外活動の減少」と言われています。(3)
これを聞いただけで、いかにゲームやスマホが近視進行の危険因子になるか、お分かり頂けるのではないでしょうか。
休憩もせず、夢中になってゲームやスマホを長時間使うことは、近視進行の超危険因子といっても過言ではありません。
また、ゲームやスマホで遊ぶ時間が増えると、おのずと屋外活動の時間が減少します。
更に、近くを見る時は、輻輳(両目を内側に寄せている状態)しています。
この状態が長時間に及ぶと、内斜視(どちらかの目の視線が内側にずれる状態)を誘発するケースがあり、注意が必要です。
目の成長段階である20歳までの間、このような過度な近業作業を行うことで、眼軸長が伸長し、近視進行を誘発する危険性があるのです。
対処法は?
近視進行を抑制する観点のみで話をすると、究極の対処法は、子供にゲームやスマホをさせないことです。
しかし、これは現代においては不可能なことでしょう。
デジタルデバイスの進化は、子供にとってすべて悪影響ではなく、学習面において効率的になっている側面もあります。
コロナ禍において、デジタルデバイスを用いた学習が大活躍したのも事実です。
これからの時代は、子供とデジタルデバイスについて、うまく共存する方法を模索する必要があります。
アメリカには、米国眼科学会推奨の「20-20-20」ルールというものがあります。
30センチ以内のものを見続けると近視が進行しやすくなることから、①20分近業作業を行ったら、②20フィートの距離(6メートル)を、③20秒間見ること、を推奨しています。
要するに、近くのものを見続けないことが重要です。
適度に休憩をし、目を休ませてあげる必要があります。
姿勢も大切です。
近業作業は、目から30cm以上は離すこと、部屋を明るくすることも重要です。
特に、細かい作業が必要なゲームをするときなど、画面から30cm以内に近づいている場合もあり、注意が必要です。
また、外遊びは近視進行抑制効果があると言われています。
最近の研究により、太陽光に含まれるバイオレットライトを浴びることで近視進行抑制効果があると発表されています。
1日2時間以上、屋外で過ごすことを推奨しています。
外で歩いている時間なども含まれるので、そう難しくはないと思います。
これらのことに気をつけていても、近視が進行してしまうことはあります。
目の成長段階で、オルソケラトロジーや低濃度アトロピン点眼療法など、近視進行抑制効果が提唱されている治療を受けるのも一手です。
まとめ
目の成長段階である子供において、ゲームやスマホのしすぎは近視進行を助長しかねません。
「近業作業の増加」、「屋外活動の減少」は、子供における近視進行の危険因子です。
そのためにも、親御さんや先生が対処法を理解し、子供に教育していく必要があるでしょう。
(1)野村耕治:視器の形態的および機能的発達とその異常.あたらしい眼科15(11),1495-1499,1998
(2)丸尾敏夫他:視能学第2版.文光堂,東京,2011,411
(3)森紀和子:近視進行抑制法の最前線.視覚の科学第43巻第1号,1-7,2022