コロナ禍における学童近視の増加

新型コロナウイルス(以下COVID-19)が日本に入り早2年。

世界有数の医薬品メーカーによるワクチン開発・供給が進んだ現在でも、COVID-19は世界中で猛威をふるっています。

ここまで長期戦になってくると、COVID-19に感染せずとも健康面、経済面などで生活に支障も出てきますよね。

 

今回は、「コロナ禍における学童近視の増加」とタイトルを付けました。

コロナ禍による長期に及ぶ自粛生活が続く中、健康面へのさまざまな被害が話題に上がっていますが、目の健康被害も例外ではありません。

では、どのような目の健康被害が出ているのか見ていきましょう。

 

コロナ禍で加速!?学童近視の増加

本サイトでも、小児期における近視について、たくさん話題をあげてきました。

近視研究の最前線

子供の近視治療

近視の原因は、大きく分けて遺伝要因と環境要因に分けられます。

遺伝要因に関しては、我々の力でどうすることもできないですが、環境要因については後天的なものですので、意識や習慣で変えることができます。

目の成長期にあたる小児期に適切な対策を行うかどうかで、お子様の目の将来が決まると言っても過言ではありません。

 

環境要因としての近視発症のリスクファクターは、過度の近業作業、外遊び時間の減少が代表格です。

 

スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどデジタルデバイスの普及により、非常に便利な生活を送ることができるようになりました。

子供たちがそれらを使用する頻度も増えてきています。

 

非常に便利な時代になった一方、これらデジタルデバイスの長時間の使用は、近視発症の環境要因である「過度の近業作業」になり兼ねない、リスクファクターの1つと言えます。

 

コロナ禍で学童近視が増加している

コロナ禍による一斉休校が行われた2020年春。

京都市の小学校での視力検査で異変が起きたようです。

 

背景を振り返ると、2020年はCOVID-19の感染者が日本で初めて確認され、世間がコロナ一色に見舞われた未曾有の年です。

COVID-19という未知の敵に対し、国はさまざまな感染予防策を講じ、三密の回避を目的に学校も一斉休校となりました。

 

NHKの調査では、一斉休校措置が明けた2020年6月に行われた京都市小学校の視力検査において、視力0.7未満の子供は、2019年は17%だったのが、2020年には23%に増加していたようです。

 

近視の研究は、中国でも盛んに行われていますが、コロナ禍の学童近視に与える影響について、論文が発表されています。

この研究では、対象を7-18歳の1,001,749人という莫大なデータを基に調査を行っています。

 

研究によると、1日2時間以上のスクリーンタイムをコロナ前、コロナ後で比較したところ、コロナ後は小学生で3.14倍に、中高生で2.07倍に増加したようです。(1)

 

ちなみに、WHO(世界保健機関)では、5歳以下の子供におけるスクリーンタイムは1日1時間以下を推奨しています。

本研究の対象者は7-18歳ですので、5歳児は含まれていませんが、目の成長期における長時間のスクリーンタイムは、近視進行スピードを加速させる懸念があります。

 

スクリーンタイム、つまり屋内活動時間が増加すれば、おのずと太陽光のもとで過ごす屋外活動時間が減少している懸念が出てきます。

同研究にて、1日1時間以上の屋外活動をコロナ前、コロナ後で比較したところ、コロナ後は小学生で1.14倍、中高生で1.71倍に減少したようです。(1)

 

屋外活動は、単純に遠くを見る時間が増え、過度の近業作業から解放されるだけでなく、近視進行抑制効果が証明されている太陽光に含まれるバイオレットライトを浴びることもできます。

 

つまり、コロナ禍において、近視進行のリスクファクターであるスクリーンタイムの時間は増加し、近視進行抑制効果のある屋外活動の時間が減少しています。

これらの結果、必然的に以下のようなデータが出ています。

 

半年間の近視進行度をコロナ前、コロナ後で比較した結果では、研究対象のどの年齢においても近視の増加が認められ、特に7-12歳の低年齢で著明な近視進行が認められました。(1)

 

ただでさえ、近視人口の増加が世界的に問題視されているなか、コロナ禍による在宅時間の増加はそれらを助長する懸念があります。

 

時代に合わせた対策を

近視進行のリスクファクターを理解することで、どのような生活環境が危険なのか、どのように対策を行うと良いかを正しく判断することができます。

近視進行抑制法

コロナ禍になり、自粛生活を強いられるなか、屋外活動の時間が制限されてきたのも事実です。

COVID-19が日本に入り、2年が経過した2022年。

時代は、COVID-19と共存する新しい生活様式を取り入れようとしています。

「コロナ前のように」とまではいきませんが、徐々に日常生活が戻りつつあります。

感染対策を行った上で、上手に屋外活動の時間を作ることも大切になるでしょう。

これを機に、近視予防について真剣に考えられてみてはいかがでしょうか?

 

まとめ

コロナ禍で在宅時間が増えるに従い、学童近視が増加しています。

近視人口の増加は、世界における喫緊の課題ですが、COVID-19蔓延に伴う生活様式の変化がそれらを助長している可能性があります。

近視進行のリスクファクターを理解した上で、それぞれが対策を講じていく必要があります。

 

(1)Xu L,Ma Y,Qu J et al.Ophthalmology.2021 Apr 1.